妊娠したことを職場へ報告するタイミング

 心拍が確認されると,胎児側の原因で流産する確率がぐっと下がる。そのため,心拍が確認された時点で妊娠診断書を渡されて,市役所へ行って母子手帳を受け取って下さいと言われた。せっかく平日に休んでいるので,その足で市役所に向かった。市役所の職員さんからおめでとうございますと祝福を受けた後,みっちりと説明を受け,山のような書類やパンフレットと母子手帳を渡された。


 さて,職場への報告はどうするか。病院に行く前に,ネットで報告のタイミングを調べてみると,安定期に入った頃がよいとする場合と,できるだけ早い方がよいとする場合が見つかった。

 安定期に入ってからの報告というのは,つまり妊娠を報告したのに流産してしまうというパターンを恐れてのこと。この場合に受けるデメリットは,周囲の噂になること,周りに気を使わせてしまうことだろうか。しかし,私は仕事で山に行くし,実験でかなり重い物も持つ。安定期に入るまでの流産しやすい間こそ,周りからの理解と助けが欲しい。このように判断して,病院に行った日の午後には研究室のボス,その上のボス,ラボメンバー,それからプロジェクトリーダーに報告することにした。


 この判断は正解だったようで,報告時に一番上のボスから,出張や仕事内容を配慮するよう研究室のボスに指令をして下さった。一番上のボスはやたら妊娠に詳しく,なんでもちょうどお孫さんが産まれる直前だったそう。また,ラボメンバーも厳寒期(当時1月)の山での調査を代わってくれたり,重い物を持ってくれたり,なにかとサポートしてくれた。おかげで流産することも無く,無事に安定期まで到達することができた。みんな,本当にありがとう。


 それから,プロジェクトリーダーから「早めに言ってくれて助かった」と言われた。彼はその時ちょうど次年度に始まる新たなプロジェクトの計画を練っていたところで,私をそのメンバーの一員として一つの小課題を任せようとしていたそうだ。もし課題案を申請した後だったら,小課題未達成になるか,代わりの人員を調整or探さねばならない。それは,彼にとってかなりのダメージとなりうる事態だった。このように,自分の知らないところで何かの計画(研修や海外出張や新規プロジェクトなど)に入っている可能性があるので,妊娠が判明したら庶務や仕事が絡みうるラボにもすぐに報告しておく方がよいだろう,とラボのボスに忠告を受けた。
 

 こうして私の取った選択「妊娠が確定したらすぐ報告する」は正しかったようにみえる。ただこれは結果論だ。例えば,Twitter上で「流産したため噂になって,大きな会社なのに知らない人がいないくらいになってしまった」ということも聞いた。このような事態によって,かなりの心理的ダメージを受けることは想像に難くない(ただでさえ流産によって悲嘆に暮れているだろうに)。それによって,会社を辞めざるを得なくなることや,鬱病を発症するなどの大きなデメリットを受けることも考えられる。
 もしこのエントリを見て報告のタイミングを考える方がいらっしゃったら,両方のメリットとデメリットをよくお考え下さい。