EMで防除できない理由

数日前のエントリで、東大寺の松の防除にEMが使用されていることについて、またその危険性について書きました。その中ではEMは防除に効果がないという前提に立って話をしています。
その理由は以下の通り。
1 病原体マツノザイセンチュウ外来種であり、アカマツクロマツは遺伝的に対抗する術を持っていない
マツノザイセンチュウは北米原産で、1904年に日本に初めて侵入した外来種です。北米ではテーダマツ、スラッシュマツなどが抵抗性を持つ種として知られていますが、これらは長い年月を経てマツノザイセンチュウと共存できるような進化をし、抵抗性を獲得したと考えられます。一方、アカマツクロマツはそのような進化をする間がありませんし、日本の至る所で壊滅的な打撃を受けている、典型的な感受性の樹種です。すなわち、病原に対して対抗する術を持っていないのです。


2 樹体が弱ると発病しやすくなるという側面はあるが、樹体を(施肥等によって)強くしたとしても発病を完全に阻止することはできない
人と風邪の関係に似ているかもしれません。ご飯たっぷり食べて、休養も取って、体力もある健康な人は風邪にかかりにくいですが、周りの人がみんな咳やくしゃみを連発している中にいて絶対発病しない訳ではありません。


3 EMに殺虫効果がある?あるとすれば農薬登録されているはずでは?
1・2の理由から、効果があるとすれば殺虫効果あるいは忌避効果しか残されていません。すなわち、マツの枝をかじったマツノマダラカミキリが死ぬという効果、あるいは避けるという効果です。そのような素晴らしい効果があれば当然農薬として登録されていると思いますが、調べた限りでは登録されていないようです。ここまで調べて気がつきましたが、もしかして農薬取締法違反にあたるのでしょうか。


東大寺のマツは、いかにも威風堂々として立派な個体です。さぞ長年に渡り丁寧に管理されてきたものと思われます。このようなマツが、誤解のもとで枯損リスクにさらされるのはとても残念です。適切な管理(魚毒性のない樹幹注入剤等)で保護されることを願っています。